小説以外のもの 書評

進化とは何か│リチャード・ドーキンス

「進化とは何か」
ドーキンス博士の特別講義
リチャード・ドーキンス
吉成真由美編・訳
早川書房

進化の過程を説明するのに「不可能の山」というのが出てきて、それが目を引きました。進化の不思議をジャンボ機にたとえると、

”優れた天文学者であるフレッド・ホイル卿(二〇〇一年に死去)は、複雑な生物が類まれな幸運によって突然出現する可能性は、「ゴミ集積場のゴミをハリケーンが舞い上げ、偶然幸運にも、ボーイング七四七型機が完璧に組み立てられるに等しい」ほど、あり得ないことだと言っています。”

ということになります。

ううむ、まさに奇跡的な確率。

たおなじように進化の過程をダイヤル錠であらわすと、

”この問題をダイヤル錠の話に戻って考えてみましょう。金庫をこじ開けて中の金を取り出そうとしているとする。ところがすべてのダイヤルが一度に全部正しく揃う確率は二一六分の一しかないので、このままでは金庫はほぼ開けられない。”

”でもまず最初の数字をランダムに当てることができたとしましょう。そうすると、金庫のドアがわずかに開いて、ほんのちょっとだけお金がこぼれたとする。第一の数字はわかったので次の数字にかかります。六分の一の確率ですから、次の数字も当てることができて、またお金が少しこぼれたとする。”

”前に見たのは数字がすべて揃わなければまったく開かなかったオールオアナッシング型の錠でしたが、ここで見たのは漸進的なダイヤル錠で、少しずつ開けることが可能でした。この錠の場合、偶然開けるために回さなければならないダイヤルの最大回数は二一六回ではなく、たった十八回になります。ですから漸進的なダイヤル錠を開けるのは比較的やさしい。私は「幸運を引き伸ばす」と言っています。途方もなく膨大な塊の中からたった一つの幸運を引き出すのではなく、わずかずつ幸運を手繰り寄せるから。”

となるのだそうです。暫時的にみれば、進化というのは意外と確率がたかいといえます。

■不可能の山

この漸次的進化を不可能の山として、この本では、以下のように説明しています。

”これは山です。「不可能の山」と呼んでいます。この頂上に座っているということは、とてもよくデザインされたものと同じような状態にあることを意味します。たとえば非情によく機能する眼のように。”

”山のこちら側は絶壁です。「運だのみの崖」と呼ばれる、切り立った崖になっている。崖の下からこの山の頂上へ跳ね上がることは、ハリケーンによってボーイング七四七型機を組み立てようとすること、あるいはたった一度の突然変異で完全な眼ができてしまうということに匹敵します。”

”反対側には、わずかずつ上昇するゆっくりとした傾斜道があって、時折やや急な上がり坂があるものの、地道にこの道をたどっていけば、途中飛び跳ねる必要もなく、麓から頂上まで登っていくことができる。”

”「傾斜進化(ramp evolution)」と呼ばれるこのゆっくり登るルートを知らずに、とてもよくデザインされた生き物が頂上にいる崖だけを見たら、それは奇跡の結果に違いないと、おそらく誤解してしまうでしょう。しかし実際には「不可能の山」を登る方法はただ一つ、傾斜進化のゆっくりとした道のりを一歩一歩踏みしめていくよりほかにないのです。長い時間小さな一つ一つの歩みを重ねていくことで、実に高いところまで登ることが可能になります。”

一見すると複雑にみえる進化も、それなりの年月を経れば、意外とたやすく達成できる。それがこの本の骨子となります。自然淘汰の裏に、たゆまぬ試行錯誤ありといったところでしょうか。

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