『Another』
綾辻行人
角川書店
見えない少女
夜見北中学校でおこる学校の七不思議。本作はその七不思議をベースにしたミステリィになっています。しかもかなり大掛かりなミステリィです。
母の実家がある夜見北中に転校してきた榊原恒一は、クラスで不可解な状況が起こっていることに気づきます。恒一が転校してきた三年三組では、謎めいた美少女・見崎鳴を、幽霊のように存在しないものとして扱っていたのです。
それには理由がありました。見崎鳴はクラスの生贄だったのです。三年三組には何十年も前からいるはずの生徒が紛れこむと災いが降りかかるという呪いがあり、この呪いを防ぐためには特定の生徒をいないものとして扱わなければならなかったのです。
しかし恒一の出現により掟は破られ、三年三組に関係者が次々と怪死を遂げていきます。いるはずのない生徒とは誰なのか。呪いを解く術はないのか? 恒一は、クラスに紛れこんでいる犯人を捜し始めるのです。
バレバレの犯人
最初はホラーテイストたっぷりなのに、読みすすめるうちに本格ミステリィへと移行していくところが、綾辻さんらしさを、発揮しています。もちろん、最後に大どんでん返しも健在です。
実をいえば、読んでて犯人はわかりました。でも、犯人に関係するもうひとつの設定まではわかりませんでした。てゆうか、あんなのわかる訳ないでしょ。今回の仕掛けは、卑怯ですよ綾辻さん、と思わず云いたくなるほどあざといものです。
綾辻作品の魅力にあり得ない犯人ってゆうのがあるんですが、今回はそれだけに留まらずいつにもましてキレてるというか、あざといというか、よくこんな配置にしたなと感心してしまいます。
ひょっとして綾辻さんってものすごい馬鹿なことを、ものすごい論理的かつ緻密に組み立ててるんじゃないかと疑っています。その意味では頭がいい人がひどく馬鹿なことを考えてるともいえます。
難点をあげるなら
ひとつ疑問だったのは、文量の多さ。
果たしてこれだけの文量が必要だったかというと首を捻らざるを得ない。この傾向は暗黒館の殺人からあって、まあ、主人公の恒一の心理描写がいつにも増して多いんで、それだけ長くなってしまったのかなと。
冗長なところがあるとはいえ、綾辻さんらしい本格ミステリィを堪能できる作品であることは間違いありません。