小説 書評

神狩り│山田正紀

『神狩り』
山田正紀
ハヤカワ文庫

山田正紀のデビュー作です。情報工学の天才・島津圭介が、古代文字を解析したところ、思いもよらない事実が判明します。解析した古代文字には十三以上の代名詞が入り組んでいて、とても人間には使いこなせるものではありませんでした。
正体不明の謎の言語。十三以上もの代名詞を含む言語を人間が理解できるはずがない。そんなものを理解できるとしたら、それは〈神〉に他ならない。それが島津の下した結論でした。

そして島津は〈神の言語〉をめぐり事件に巻きこまれ、仲間を失いながらも、背後にひそむ〈神〉の殺害へ突き進んでいきます。
<神>の殺害という狂想、そう、神狩りに向かって──。

神への抵抗

デビュー作にして本格ハードボイルド。ありがちな構造に、知識とうんちくを盛りあわせ、平均値以上の作品を紡いでしまうあたりはさすが山田正紀、非凡な才能を感じます。

ファンタジーの世界観をベースにしたストーリーであれば、世界を統べる神と対峙する展開はありがちですが、現代ベースのハードボイルドから神を語るのは思いのほか想像力が必要です。そういう意味では、想像力を駆使した山田正紀らしい作品だとおもいます。

<神>をみつめる山田正紀の視点がどこをむいているのか。
<神>を語ることも多い山田正紀だけに、作者の視点がちょっと気になります。

-小説, 書評