小説 書評

カムパネルラ┃山田正紀

「カムパネルラ」
山田正紀
東京創元社

主人公は、銀河鉄道の夜の研究者だった母親の遺骨を散骨するため、花巻にむかいます。新幹線のなかで遺骨をわすれ愕然としていたところ、主人公はタイムスリップを経て、昭和八年にやってきます。そこは銀河鉄道の夜と昭和八年が、入りまじった不思議な世界でした。

事態の整理ができないまま、昭和八年の花巻で、カムパネルラ殺害事件が発生。主人公は「銀河鉄道の夜」の登場人物”ジョバンニ”となり、カムパネルラ殺害の容疑者として警察の取り調べを受けることになります。はたしてこの世界の目的はなんなのか──?
主人公は「銀河鉄道の夜」の結末をかえるべく、この世界の運命に翻弄されていきます。

山田正紀のSF、しかも久しぶりの力作です。SFの”濃い”感じがたまりません。壮大な試みはお世辞にも成功とはいえませんが、それでもこの構想はよむ価値があ流でしょう。タイムスリップに銀河鉄道の夜をプラスし、そこに推理モノを持ちこもうとするところに山田正紀の蛮勇を感じます。これはとんでもないアイデアです。

えげつない。山田正紀は本当にえげつないです。

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