『隻眼の少女』
麻耶雄嵩
文藝春秋
あらすじ
平安時代の衣装の水干をまとった美少女が、探偵となって事件を解決するお話しです。
この話は二部構成になっています。
一九八五年・冬。
二〇〇三年・冬。
間が十八年も空いてます。前半の一九八五年・冬は、御陵みかげ(母)が探偵で、後半は御陵みかげ(娘)が探偵になります。いずれの事件も助手は種田静馬という冴えない男がつとめます。ある意味ミステリィにはうってつけの役です。そして読み手である我々は、この種田静馬の視点から事件を眺めることになります。
十八年前と後で母と娘が探偵を務めるのですが、その母娘の関係がポイントになっています。そして、ここに大いなる仕掛けが施されているのです。
ほぼ同じ構造のもと事件が進行し、おなじ舞台、おなじ役割の登場人物によってストーリーが進行していきます。パターンが決まっているので、すらすら気持ちよく読めます。ですが、気持ちよく読んでいったときにはすでに麻耶雄嵩の罠にはまっています。
なぜ、同じかたちのストーリーを二部構成にしているのか?
それが甚だ疑問でした。意味ないじゃん、まったく。それくらいに思っていたのですが、してやられました。
これは二部構成でしかできないトリックで、読み手の盲点を巧妙についています。そして、探偵は犯人足りうるか? という難題を提示し、むりなく解決しています。同じタイプの話を連鎖的に続ける形式でいえば、森見登美彦の「四畳半神話体系」や舞城王太郎の「九十九十九」が思いつきますが、これらのパターンとくらべても仕掛けのちがいが格段です。