小説 書評

密閉教室│法月綸太郎

「密閉教室」
法月綸太郎
講談社文庫

笙子は、朝早く学校にやってきたのですが、教室のドアが開かず、往生します。両手で引いても効果はなく、ドアはびくともしません。担任が駆けつけ、力ずくでドアをこじ開けると、がらんとした教室の中央に死体がありました。死んでいたのはクラスメイトの中町。

奇妙なことに窓には錠がかかり、ドアはなかから動かないようガムテープで目張りされていました。つまり、死体のあった教室は、密室状態にあったのです。

ここでふたつの疑問が生じます。密室のなか、中町がどのようにして殺されたのか? というのがひとつ、もうひとつは、教室にあったはずの四十八組の机と椅子が、どこに消えてしまったのかというものです。

■学園ミステリィ

推理小説マニアの工藤順也、警察の捜査を指揮する森警部、頼れるみんなの担任・大神、純情なヒロインなど、中町の死をめぐりさまざまな人物が登場します。ストーリーも小刻みに途切れることなく展開し、なかなかいいテンポです。

しかし学園のなかの犯行ということで、話がすべて学園内にとどまっていて、ロケーションが広がりません。学園というひとつの空間で物語が自己完結するため、小じんまりした印象です。

ゆえに、読んでいると、どうしても途中で飽きがきます。トリックが趣向を凝らしているのに単調さがただようのは、そのあたりに原因があります。

トリックの良さが、ストーリーとイコールにならない。それがミステリィの難しいところだとおもいます。

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