
物部氏の伝承
畑井弘
講談社学術文庫
物部氏というのは氏素性ではなく、職業集団の呼称ではないか。いささか衝撃的な内容ですが、この本はそう主張します。兵器のことをモノノグと呼び、兵士のことをモノノフと呼んでいた古き時代、軍事をつかさどる省庁のような存在として物の部、すなわちモノノベがいたというわけです。
そのモノノフが時をへて武士となり、やがて武家社会の創成へとつながっていくわけです。これはなかなか合理的な発想で、徳川という一族名が数千年のこっていると考えるより、武士という存在が数千年かたりつがれていると考えたほうが名称としては残りやすいでしょう。
また朝鮮語の発音から古代史を紐解いていくところも秀逸です。

日本語の「ツルギ(剣)」は、もともと朝鮮語からきていて、だとするなら、立山が太刀山と転じ、太刀から剣の意味をもった剣岳になるのもうなずけます。これはもう論理的帰結ですね。