文脈でよむ

狂気の歴史あるいは山田正紀

白の協奏曲
山田正紀
双葉社

謎の潜水艦の出現によって、首都東京に厳戒態勢が敷かれる。東京の街から人がいなくなる。すこし大げさな感じがするが、冒険小説といえば冒険小説で犯罪小説といえば犯罪小説。ただ山田正紀の冒険劇を余すことなく味わえるという点で、「白の協奏曲」はつよく推したい。

女囮捜査官
山田正紀
幻冬社文庫

SFに軸をおいていた山田正紀が、ミステリィにシフトするきっかけとなったのが女囮捜査官シリーズ。ミステリィの技量がふんだんに散りばめられている。シリーズ全五作だが、五作とも趣向がぜんぜんちがっている。多彩な描きっぷりは、ちょっと引くレベル。

ツングース探検隊
山田正紀
ハルキ文庫

冒険小説でありながら非現実なSFの世界に誘うという離れ業を見せている。現実とSFを行きつもどりつしながら、SFの世界に突き落とされる。両方のジャンルを高い次元で統合するのはかなりのスキルだとおもうが、かなりのスキルなのに山田正紀はそれを平然とやってのける。

屍人の時代
山田正紀
ハルキ文庫

ミステリィというよりは厳密にいえば探偵小説なんだろう、これは。物語終盤において呪師霊太郎というなんとも禍々しい名前の探偵が現れ、謎を解きあかしていく。装置としての探偵も優れている。

ロシアンルーレット
山田正紀
集英社

幻想めいたSF短編。一つひとつが独立した短編であるにもかかわらず、「同じバスに乗りあわせた乗客」という設定をもちこむことで、連作のような作りに仕立てなおしている。様々な作品を書きわけられる山田正紀の技巧──それはもはや思考といってもいいがあり、その自在な思考に圧倒される。

-文脈でよむ