
ヴェーバー入門 理解社会学の射程
中野敏男
ちくま新書
”資本主義がいかに生成したのかではなく、すでに成立している資本主義が人間に対してどのように作用しているかであり、そこで起こっている事態に対していかに対処するべきか、であったことは明らかでしょう。”
人間は、目に見えるものみえないものすべてを理解しているわけではありません。ときに、なにか大きな力によって支配されているのではないか、そうおもうこともしばしばです。目にみえない原因を明らかにするのではなく、大きな力にどう対処すべきか。現実に即して考えているのが、ヴェーバーの特徴です。
現実への作用に着眼している点でヴェーバーの思考は独創的です。こういった視座は、人間の生活を全体的に理解しようとしたマルクス、ニーチェ、フロイトと共通します。見えない敵による支配は、あるいは人間の不自由さを象徴しているような気がします。
埒外にいたときは自ら資本主義を望んでおきながら、いったんその内部に入るや、資本主義から逃れたくてしょうがない。人間らしいといえば、これ以上人間らしいものはないでしょう。不条理の一端がかいま見たおもいです。