
模倣の殺意
中町信
創元推理文庫
作家が失踪する事件の捜査をすすめるうちに、のこされた原稿と事件が酷似していることが判明する。原稿と事件はどこまでリンクするのか──というかたちでストーリーがすすむ。ボタンの掛けちがいがポイントになっているのだけれど、そのポイントにくるまでなにひとつ違和感がなくて、なにに騙されているのかまったくわからない。これほど精巧なミステリィは見たことがない。

時計館の殺人
絢辻行人
講談社ノベルス
綾辻行人の代表作「時計館の殺人」。ひとつの企みをもとに虚構装置をつくりこむのがミステリィの真髄だとすれば、軸がぶれずに最後まで「企み」をまっとうしている。ある意味とても潔い作品だとおもう。正直トリックは読めてしまうけれど、それでも十分たのしめる。

そして二人だけになった
森博嗣
講談社ノベルス
海のあいだに渡した海峡大橋が舞台になっている。橋を支える二つの支柱があり、海のなかに聳えたつ巨大コンクリート建造物がたっている。コンクリートの部屋にまわりは海で囲まれたクローズドサークルで殺人事件がはじまり、一人またひとりと死んでいく。迫りくる恐怖のなか、犯人はいったい誰なのか──と展開していく。
アガサクリスティの名作を模した作品は多くあれど、使い方としてはこれがいちばん秀逸ではないか。

湖底のまつり
泡坂妻夫
創元推理文庫
山あいの地で男性に助けられた女性が恋に落ちる。女性が男性の姿を追って、村まつりがおこなわれている神社に行くと、男性は煙のように姿を消していた。しかも村人に男性の名をたずねると、かの男性は一ヶ月前に死んでいるという。密室装置に誘導されるかとおもったらとんでもないとろこに導かれたという感じ。