文脈でよむ

音楽がおもしろい本

本を読んでいるのに音楽が頭のなかで鳴りひびく。そんな読書体験をしたことはないだろうか。外からか内からなのかのちがいはあれど、ことばも音楽も、なにかを想像させるという点で働きはおなじなのだ。

ピアニストは語る
ヴァレリー・アファナシエフ
講談社現代新書

ロシアを亡命したピアニスト、ヴァレリー・アファナシエフは、このとき九○歳に達している。鬼才とも称されるピアニストが、自分の半生について語っている。モスクワ音楽院での生活、コンクールと亡命、師と仰ぐギレリスの関係、そして創作活動と音楽についてなどなど。単なるピアニストとしてだけでなく、ヴァレリーの語ることばは深い思索にみちている。その姿は哲学者を彷彿させる。

蜜蜂と遠雷
恩田陸
幻冬舎

芳ヶ江国際コンクールにひとりのピアニストが現れる。天才ピアニストの名は風間塵。彼は成果的に著名なピアニスト、ユウジ・ホフマンの推薦状を携えており、審査員を驚かせる。異端児・風間塵を中心にコンクールは盛りあがりをみせ、将来を嘱望されるマサル・カルロス、消えた天才少女栄伝亜矢、引退間近の苦労人高島明石らが、次々と演奏を披露していく。

四月は君の嘘
新川直司
講談社

かつてピアノコンクールを総ナメにした天才ピアニスト・有馬公正は、母親を失ったショックにより、ピアノが弾けなくなっていた。そんな有馬のまえに可憐なバイオリニスト・宮園かをりが現れる。天真爛漫な宮園の演奏に刺激され、有馬はかつての情熱を取りもどしていく。

シューマンの指
奥泉光
講談社

かつて音大生だった里橋は、永嶺修人がシューマンを弾いていたとの手紙をうけとり衝撃をうける。それもそのはず、かつて天才ピアニストと謳われていた修人は、指を怪我して演奏ができなくなっていたのだから。過去を反芻しながら、里橋は修人が指をうしなった事件をおもいだす。

-文脈でよむ