「ピアニストは語る」
ヴァレリー・アファナシエフ
講談社現代新書
ヴァレリー・アフェナシエフとは、ソ連から亡命したピアニストです。ライプツィヒ・バッハ国際コンクールに優勝したアフェナシエフは、エミール・ギレリスに師事し、六九歳の大御所となったいまでも、独創的な演奏にとりくんでいます。
この本には、ヴァレリー・アファナシエフが、目白台の蕉雨園でインタヴューに応じた内容が収録されていて、閉ざされたソ連での生活、モスクワ音楽院での学生時代、コンクール、亡命、ピアノ演奏、ベートーヴェンへの想いがかたられています。創造性とそのヒントなど、その話題は多岐にわたります。
■鬼才の思考
とくにベートーヴェンのソナタを録音したときの話は示唆に富んでいます。鬼才の思考の一端を垣間みるようで読みごたえがありました。アファナシエフの凄いところは、ピアノの技巧云々というより、いかにピアノと向きあうか──というその一点につきるかもしれません。
この新書は全体的にピアニストの世界をかたるというより、ヴァレリー・アファナシエフの人生回顧録になっています。亡命時のエピソードなんか、実話とはおもないほどスリリングです。おもいきって映画にしたらどうかなと。案外、ミッションインポッシブルみたいになるとおもうのですが。