文脈でよむ

地形について考える本

これはもう完全にブラタモリの影響で読みはじめた。地理本なんで地味なジャンルで、書店でさがそうとしてもけっこう苦労する。やっとあっとかたとおもったら横にるるぶとか置いてあって、ちがうそこじゃない! とおもうこともしばしばだ。「東京スリバチ地形散歩」で実際に地形を確認するように都内を歩いてみたことがある。これが実におもしろかった。

東京「スリバチ」地形散歩
皆川典久
洋泉社

地形の凹凸が、色分けによってわかりやすく示された地理本。この色付けされた状態で東京の地形をながめると、でこぼこしているのが一目瞭然だ。地図でみていたときの印象と実際に歩いたときのそれがちがうのは、地図にあらわれない凹凸のせいだとおもう。地図では直線距離でも、じっさいには坂のアップダウンがあるので、遠回りしたほうがよいときもある。そういうのはじっさいに歩かないとわからない。東京の街をブラブラ歩くこともあるが、道路沿いにたちならぶ建物が視界をさえぎっていて、土地のかたちを認識するのはむずかしい。しかし東京「スリバチ」地形散歩をガイドとして読めば、脳内でイメージがひろがり、地形が補完される。

人類と気候の10万年史
中川毅
講談社ブルーバックス

ミランコビッチ理論にもとづいた気候変動を紹介している。地形をかたちづくる要因として、地震や火山のほかに、海面上昇や風雨といった気候要因があげられる。川にそってのびる一段低い土地をみれば、ここは雨がふったとき増水した川で削られた場所だなと想像するし、海岸近くの駅周辺で一段さがった低地をみれば、ここはかつて海だったのだろうと海面上昇の時代に想いをはせる。土地のかたちには、気候変動の記憶がのこされれている。地形をみるには、まず気候から。

フォッサマグナ
藤岡換太郎
講談社ブルーバックス

日本を縦断するように走っている巨大な断層をフォッサマグナという。このフォッサマグナがどのようにできたのか? それを解きあかすのは、現代の科学をもってしても難しい。しかし著者はあえてこの限界に挑み、フォッサマグナの下にうごめく巨大なマグマを想像している。海溝が重なりあった三重地点、その下に眠るマグマ溜まり、それに押し出されるようにして連なるアルプス山脈。フォッサマグナを考えればかんがえるほど、日本の地形の異常さがわかるだろう。

3000年の密室
柄刀一
光文社文庫

密室状態で殺害された原始人の謎にせまる異色ミステリィ。スケールという点ではこれを超える密室はない。密室の謎を追っていくと、最終的にほとんど奇跡にしかおもえないようなトリックに行き当たる。いささか誇大妄想めいたトリックだが、地形のなりたちそれ自体が奇跡であること知れば、こういうことがあるかもと思えてくる。

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