小説 書評

ヨハネスブルクの天使たち│宮内悠介

『ヨハネスブルクの天使たち』
宮内悠介
早川書房

ミリタリーベースにした近未来SF。ゼロ年代の最高峰とうたわれる伊藤計劃の「虐殺器官」の世界観をかりて書かれた宮内悠介の短編集です。アメリカの暗殺専門情報軍に所属する主人公が、紛争地域に潜入し、任務を遂行するというのが基本的な筋となっています。というか、筋をどうこういうつもりはありません。

シンプルとも素っ気ないともいえる独特の世界観をつかうことで、誰でも伊藤計画の話になるというのが目新しかったです。世界観って大切ですね。

感情と抑揚をおさえて淡々と語られる口調は、伊藤計劃のそれとよく似ています。ただあまりに淡々としていてストーリーに起伏がなく、展開もはっきりしません。おもしろいうかと問われると微妙な感じがします。伊藤計劃をリスペクトしてるのか注意深く読んでみたのですが、それを感じることはありませんでした。もちろんリスペクトはしてるとおもいますよ。ただ、どうもわかりにくい。

DX9なる軍事ロボが全編とおして出てきて、それが唯一この短編集のこだわりではないかと思うのですが、
───それがなに?
と冷静なツッコみにしかならず、結局のところこの作品の意図がどこにあるのかは最後まで不明です。「盤上の夜」のあとに出た作品だけに期待は大きかったのですが残念な結果におわりました。伊藤計劃の世界観を共有したいという人にはオススメかもしれません。

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