小説 書評

妖鳥 ハルピュイア│山田正紀

『妖鳥 ハルピュイア』
山田正紀
幻冬舎ノベルス

病院を舞台にした本格ミステリィ。時計台から飛び降りた死体がなぜか数十メートル移動しているという不可思議な事件が発生します。そのとき、医師は窓の外を横切る黒い影を目撃し、ハタとこう思います。ハルピュイアが空中で死体をかっさらって、移動させたのではないかと。 

ハルピュイアというのは、ギリシャ神話にでてくる顔から胸までが女性で、翼と下半身はハゲタカという怪物です。食欲が旺盛で意地汚く食糧にありつき汚物を巻きちらして去っていくくらいですから、ちょっと下品な怪物だったりします。

記憶喪失

入院していた先輩刑事の依頼で、病院でおきた奇妙な事件に刑事が足を踏み入れることになり、火事による消失事件やら記憶をなくした看護婦やら事件が発覚。話がすすむにつれ、謎が謎をよぶ展開になっていきます。 事件の発生からミスリードまでが、あたかもSFのような煽りで、謎の解決にむけては本格の手続きを踏んでいきます。SFとミステリィの融合は山田正紀の一貫したスタンスといえます。

結末をあまり覚えていないものの、よく作りこまれたミステリィです。もっとケレン味があれば京極堂みたいになるのになァと思って読んでいました。ミステリィ・オペラと比較すると、そのあたりがよくわかります。 

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