小説 書評

マリア・ビートル│伊坂幸太郎

『マリア・ビートル』
伊坂幸太郎
角川書店

東北新幹線に乗り合わせた殺し屋たちの群像劇です。殺し屋コンビの檸檬蜜柑、不運を絵に描いたような男・七尾、子供を殺された過去をもつ元・殺し屋の木村、悪魔の狡猾さをもつ中学生・王子──。 

といった一癖ある殺し屋が登場します。 業界でおそれられる殺し屋のドンがいて、ドンからの命令が失敗したことが原因で、失敗を隠そうとして事態が悪化。嘘に嘘を重ねていく過程で、殺し屋がお互いに潰し合う結果になり、そこに悪魔のごとき中学生が参戦し、事態は混迷を深めます。ぐるぐると事態がかわるなか、最終的に、中学生vs殺し屋みたいな流れになってきます。 

矛盾

このお話しのポイントは、ほこたてです。最強の盾最強の矛が交わる瞬間、それは幸運を宿した中学生と不運きわまりない殺し屋が交わるとき、いったいどちらの運がまさるのか。

悪意をやどした中学生が狡猾に人を陥れていくさまは、不快感でいっぱいです。もやもやしながら、「なんなの、このガキ」とおもって読んでました。最終的に王子を懲らしめるその懲らしめ方がなんともユニークで、不運も使いようによっては強力な武器になるというのが痛快でした。まあ、本人にとってはいつもの不運なんでしょうけど。

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