小説 書評

アメリカ銃の謎│エラリー・クイーン

『アメリカ銃の謎』
エラリー・クイーン
創元推理文庫

二万人の観衆を集めたロデオ興行で事件が発生します。四十人のカウボーイをしたがえ疾走するなか、先頭を走っていた英雄バック・ホーンが、何者かに銃で撃たれ殺害されてしまいます。カウボーイや関係者はもとより、二万人の観衆まで巻き込んで一大捜査がおこなわれたにも関わらず、凶器となった拳銃は一向に見つかりません。 凶器が発見されれば犯人もおのずとわかるだろう。そうタカをくくっていた警察は消沈し、ひとつの拳銃をめぐって捜査は暗礁に乗り上げます。はたして自動拳銃はどこにいってしまったか? それがこの「アメリカ銃の謎」の最大のミステリィとなっています。

木を隠すには

隠し場所は意外にも簡単で、出てきた瞬間にそこか! と思います。あまりの単純さに子ども騙しとさえ思えますが、それまでのミスリードが論理的というか、銃の角度やらなんやらと格式ばった展開をするので、いい具合にエラリー・クイーンの罠にはまります。

ふつうここまで枠組みを変換するとドヤ顔したくなるのですが、淡々と緻密に論理を重ねていってまったくイヤミがない。上質な職人技を感じさせてくれるからやっぱりエラリー・クイーンは好きですね。
小さな嘘には騙されず、大きな嘘に容易に騙される。
そんな人間心理に見事についています。

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