小説 書評

純平、考え直せ│奥田英朗

『純平、考え直せ』
奥田英朗
光文社

組の盃をもらって二年目の坂本純平は、いわずとしれた末端構成員。早い話ヤクザの使いっぱしりです。
組の兄貴にモーレツに憧れ、組長から鉄砲玉になれといわれても、「はい、やります!」と躊躇なくこたえる青いヤツ。若いし、人を疑うことを知りません。男気だけで三杯の飯がくえるような若者です。

歌舞伎町を舞台にしたヤクザの青春グラフィティは、悲喜交々の奥田ワールドになっています。「若さ」が鼻にツンとくるところがなんとも切なく、それをおもしろおかしく描くあたりに奥田英朗の妙技――それはある意味で人の悪さを象徴しているのですが、が隠されていると思います。これは昔話でいうところの馬鹿息子の笑話ではないか、と思っているのですがどうでしょう。

にしても。
同じ歌舞伎町を舞台にしているのに、どうしてここまで馳 星周とちがうかな。とても同じロケーションとはおもえません。

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