小説以外のもの 書評

ふしぎの国のアリス

『ふしぎの国のアリス』
ルイス=キャロル
芹生一訳

あらすじ

うさぎの穴に落っこちたアリスが、不思議の国に迷いこむというお話しです。
アリスは不思議の国で不思議な体験をします。体が大きくなったり小さくなったり、溺れそうになったり。水キセルの芋虫と会って、ウィリアムとうさんを暗誦したり、チェシャーネコに三日月うさぎのいる場所を教えてもらったりするのです。またハートの女王のまえでハリネズミをボールにしたクローケーをやったり、裁判中に身体が大きくなって退去を命じられたりと脈絡なく不思議な現象が続きます。
最終的には夢から醒めるように現実へ戻ってくるわけですが、よくよく考えたらこれは夢オチで、要するにどうしたら終わるのかよくわからなくてそうしてしまったのではないか、と穿った見方をしています。

おもしろさの秘訣

お話しの構造はシンプルです。つまらないほどシンプルといってよく、それは単にアリスが行って帰ってくるというだけのものです。不思議の国でアリスが何かを探したり、試練が与えられるわけではなく、ましてや敵と対決したりすることもありません。


では、アリスの魅力は何なのか? と考えたとき、それはワールドモデルキャラクターの豊かさに行き着く他ありません。
水キセルの芋虫、トランプの庭師、魚や蛙の召使い これらのキャラクターはどこかズレていて可愛らしいのです。アリスとのやり取りには思わず微笑んでしまいます。 特にネムリネズミ、三日月うさぎ、帽子屋さんのスリーアミーゴーズは愛嬌満点でいいキャラしています。
異世界へのトリップ。キャラで楽しませる。
不思議の国のアリスはストーリーはなくともお話しはできてしまうというもっとも端的な例といえます。つまり、ファンタジーのもっともシンプルなスタイルなのです。 

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